阿波の自然探訪　（徳島市民双書・26）

　平成3年明けましておめでとう。皆さんには益々お元気でよいお年をお迎えになったことでしょう。
　さて皆さんには連絡してあったりなかったりであるが、以下のことについて本年末までには発刊できるようにとのご連絡が市図書館からきた。「徳島市民双書第26集」についてである。私としては立案者の一人としてかなりの期待と自信をもっているのであるが、果たして世評にたえるものができるかどうか、ひとえに皆さんのお力にまちたい。署名は未定。これもご協議いただきたい。私案として「阿波国採集奇談」・「徳島県採集異聞」・「採集こぼれ話」とかを考えた。昭和初期からの採集苦心談や珍聞・植物の分布やフローラ（植物の社会）・地学・動物調査のうら話などを書き残したいと思っている。この方面にたずさわってきた人も、すでに故人になられた方やよわい八十をすぎた人もでてきた。今にしてこれらの事実を書き残しておかなくては近い将来すべて雲散霧消するおそれがある。先年阿部近一氏は「徳島県植物誌」を著し、本県植物分類分布についてのまとめをされた。私たちは研究や論文の一歩手まえのこぼれ話、うら話的なものを広く動・植・地学・天文にわたって一般大衆にアピールしたい。執筆者は多数になると思うが、これらの方々の衆知を集め昭和の時代を語るフィールド調査の記録としたい。事実は小説より奇なりというが個々の著者の体験は貴重なものであり、珍しい話である。調査で宿泊し一杯やったときなど懐旧談で夜のふけるのも知らないではないか。このたびはそのような話をご提供いただきたい。皆さんのとっておきの昔話をご披露願う。虎は死して皮を残すというが皆さんの名文を墓標として止めたいと念願している。
　各自何篇でもご提供いただきたい。
　ご多用中まことに恐縮ながら、以上の趣旨にご賛同いただき左記のとおり第一回編集委員会を開催したい。全員のご参加をお願いする。

　記
一、日時
　平成3年1月26日　午後2時
一、場所
　徳島市立図書館（徳島町城内）
一、編集代表
　徳島県植物同好会　評議員　木村晴夫
　徳島県博物同好会　会長　富島啓次

　以上の文はこの本をつくる第一回編集委員会開催の案内状である。この本の趣旨をよく言いあらわしていると思うのでこれをもってまえがきとする。

　（木村晴夫）